いのちの光 学園牧師のメッセージ

メッセージ

2015/01/07
~『失敗者の自叙伝』に学ぶ~(7)

「親の責任」
「両親が私の性格や経歴にのこしてくださった直接の感化として、私は、いくつかのはっきりした
要素を、容易に父と母の両方に尋ねて行くことができる」とヴォーリズは言っています。
彼の両親に対する思いは、深い敬愛の念で満ちています。それは、両親が物質的な豊かさや富を
子どもに遺したからではなく、両親の実直な人格とその影響への感謝の念と言ってもよいのではと
考えます。そこに特別な幸せを感じていたヴォーリズですが、彼の生き方は、やはり両親の生き方
と重なるところが多くあると感じます。親の想いが子の願いになると言われますが、親の清廉潔白
な人格がヴォーリズの生涯にも貫かれたように思います。
親の人格に関するヴォーリズの表現は、確信に満ちています。「天性潔白、邪悪に屈せず、正義に
は積極的、名利や権勢にたいしては、恬淡無欲、廉潔、社会的責任において卓越していた」と述懐
しています。これだけ鮮明な印象をもって親を誇りとする彼の言葉には、親の生き方や言葉、行動、
生活が子どもの「直接環境」として大きな影響を与えるのだと言おうとしているのではないでしょ
うか。
絵が好きで、詩を作っていた母の感化、家庭での毎夜の読書時間に読み聞かせをしてくれる父の
感化など、ヴォーリズの少年期に及ぼした両親の影響は、生涯にわたって彼の生き方に大きな影響
を及ぼして行ったと考えられます。両親の信仰、音楽、絵画、作詩、読書の環境などが彼の人間形
成の霊的、精神的、文化的な側面で大きな影響となっていることに気づきます。
ヴォーリズの少年期の霊的、精神的な感性に大きな影響を与えたもう一つの注目すべき点は、日
曜日の教会礼拝の後に、家族そろって、馬車で遠乗りに出かけて行ったことです。大自然の静けさ
と雄大さの中で、家族ともども荘厳な日没の光景に深い感動を与えられ、天地万物の創造主の厳か
な臨在を感じたことです。大自然の中で、神の厳かな存在を感じ、神と向き合い、自分と向き合う
時間の過ごし方が人間形成の上で大きな影響を及ぼしていることです。
家庭教育や躾は、仕事で多忙を極める今の時代の親にとって、容易なことではないのですが、い
つの時代においても、親の子に対する当然の責務です。しかし、今の時代は、子どもたちの教育や
人間形成には、家庭のみならず、学校や地域社会との連携が大きな比重となってその役割をはたし
ています。親の責任だけを問う時代状況ではないと考えます。家庭、学校、地域が共に連携を強く
し、未来を担うこどもたちの教育と人間形成については、社会全体の強い使命感が必要とされてい
る時代ではないでしょうか。
現代の私たちは、家(ハウス)があっても家族が向き合って時間を過ごす家庭(ホーム)がない
という現状ではないでしょうか。また、テレビや電子機器と向き合う時間が多く、親子の対話、交
わり、家族との談笑もあまりにも少なく、まして大自然の中に身を置き、自然との対話によって自
らの内面的価値を高めてゆくことなどは、より困難な時代になっていますが、これでよいのか?と
問い直したいものです。
このことについても、個々の家庭の責任に終わらず、今を生きる私たちの時代、社会全体の在り
かたが問われていることなのだと考えます。より小さい者、より小さいことを大切にする社会の在
りかたが求められているのではないでしょうか。よりよき社会は、よりよき小さい者によって成り
立って行くものだと考えます。大きいものは、より小さいものの支えなしには、成り立つはずがあ
りません。大は、小より成ることが忘れられている社会の現実が家庭にも子どもの教育や人間形成
にも暗い影を落としているのではないかと考えます。人間の内面的価値や尊厳を軽んじる経済的価
値最優先社会の暗い影に光りをあてる教育を目指したいものです。

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