いのちの光 学園牧師のメッセージ

メッセージ

2014/10/08
ヴォーリズ没後50年~『失敗者の自叙伝』に学ぶ~(5)

―生きる力を養う―

 

日本では中学高校生のアルバイトは原則、禁じられています。義務教育段階の中学生が、奉仕活動ではなく、自ら働いて学業に必要なものを購入するためにお金をかせぐことなどは、もってのほかであると一喝される日本社会です。では、なぜ義務教育を終えた高校生がアルバイトをして、家の生計の手助けをすることまで禁じてしまうのか?本当に考えさせられます。してはならない、させないためのいろいろな理由は多く上げられます。できない理由ではなく、できるように考える教育的視点が大切ではないでしょうか。自ら汗を流し働いてお金を稼ぐことの大切さやお金の管理や使い方など、社会人になる前に学べることは山ほどあるはずです。

ヴォーリズ少年は、小学校の時代からオルガン奏楽や物品販売などをしてお金を稼いでいたことが記されています。ひと夏で一年中の学費をもうけ、その経験が数年後には、自活しながら大学で学ぶ尊い経験になったこと、さらにアルバイトの経験を通して教育的利益を豊かに受けたことが述べられ、それに比べれば、経済的な利益などは言うに足りないものであった、と記しています。物品を販売するための創意工夫、自分の頭で考え、人の心を動かして満足感を与え、自分の目標を達成する実業的センスが培われたに違いありません。

ヴォーリズは働くことの教育的効果について確信をもって語っています。「幾度となく思い出して考えることがある。もし私の父が裕福であって、私の学費全部を支払っていてくれたら、私は自分の教育において、最上の要素となる部分を失っていただろう」。

若きヴォーリズにとって、教育本来の働きは、学校で学ぶ学課以外に彼が携わったあらゆる仕事に存しているのであって、学校という物理的に狭い領域に閉じ込められってしまうものではなかったのです。ヴォーリズが携わったアルバイトは、多様です。学生食堂、市中のレストランのウエイター、レストランでのピアノ演奏、ボイラーたき、外国人の英語家庭教師、勤労少年のためのクラブ指導、YMCA少年部オーケストラの指揮者、YMCA夏季キャンプのグループ指導者などなどで課外活動に時間を費やしたのです。

さて、欧米のように、高校生がアルバイトをするのが当たり前の日本の社会ではありませんが、人間形成の学びをする「勉強」として学校教育機関がもっと肯定的積極的に生徒が働くことを評価したいものです。自分のことは自分が責任をもって解決する自立心、生きる力を育てることが大事ではないかと考えています。「自助」、「共助」、「公助」という言葉がどの領域でも飛び交っている日本社会ですが、教育の領域においては、「自助」を妨げる環境づくりが横行しています。教育には、個々人の個性、能力を伸ばし、個々人が自立した人間になることが求められていますが、日本では、親や教師、大人への依存度が大きすぎるのではないでしょうか。「アルバイト」を即「非行」に結びつける考え方は、もうこのへんで終わりにして、教育が子どもたちの全人的な人間形成に力強く後押しする力を発揮したいものです。できない理由を挙げ続けるのではなく、できるように積極的な改革をしたいものです。

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