いのちの光 学園牧師のメッセージ

メッセージ

2014/09/08
ヴォーリズ没後50年~『失敗者の自叙伝』に学ぶ~(4)

―考える力、工夫する力、生きる力を養う―

 

ヴォーリズは、「河畔に育つ者は英知を受け、山間に育つ者は品性を受く」の格言を引用し、もっと長くその環境にいたら、「少しはひとなみの人物になっていたかもしれない。・・・山間地方の恩恵を完全に受けるには、少々行くのがおそかったように思われる」と悔やんでいるのですが、7歳を過ぎてそのような大自然の環境に身を置いて生活できたことは、幸いなことであったと考えます。もっと早くからそのような環境で育てば、さらに大きな人物になっていたということかもしれません。いづれにしても、アリゾナの大自然の恵みは、彼の人間形成で重要な役割を果たしたのです。「健康は、確かに、北部アリゾナの風土が与えた貴重な賜物であった。また精神の高揚は、山や谷やココニノの森のおかげであり、夜の高原の清らかな大気、荘厳な空、言語に絶する早朝の燭光や薄明の日没などから受けた」と述べています。

「私は、この地の生活を通して、史学・人類学・地質学・その他の深い学問に対して、新しい視野を与えられた。後年、学校の教科書でそれらを勉強するようになって、感じたことであるが、もし私がこの時期に、山間の洞窟や谷の断崖にあった、有史以前の遺跡に接し、原住民や外国人との生きた接触を経験しておらなかったら、これらの学問は、さだめし無味乾燥なものに過ぎなかったであろう」。

小学校卒業時まで、夏休みになれば、森林の原野へ遠足に行き、丸太小屋を建てたり、キャンプファイアーをしたり、自分で遊び道具を作ったり、料理を煮炊きしたりして、大自然の恵みのなかで、その魂を潤すヴォーリズ少年の勉強は頭だけの知識の蓄積だけには終わらなかったのです。彼の両親も、成長期にある子どものためには、大自然の恵みの中で、子どもたちが生活の知恵を働かせ、必要なものを創り出すことを学ばせ、自分でその課題を解決するのが生きる力を養うことにつながると考え、大切にしていたようです。大自然の恵みが彼の「いのち」の糧となり、少年ヴォーリズは、心身の健康を取り戻し、自立の精神が培われて行きます。

大自然の環境の中で、魂が息づき、知識を得るための勉強や学習だけに終始しない「遊びと学び」の体験、自分の頭で考える「モノ創り」の積み重ねなど、日ごろ私たちが軽視をしている事柄ではないでしょうか。知識を貯めこむだけでは、人間教育にはならないのです。自然の恵みの中で、身体を動かし、魂の呼吸をする。そして自分の頭を使い、知恵を出し、工夫をし、遊び道具や必用なモノ作り、自分で料理のまかないをすることなど、これが人間教育として大切にされねばならない事柄ではないでしょうか。「これらは、私の性格の基礎となり、それを土台として、すべてのものが築かれて行った」と記されています。

生きる力を培うことが人間教育の基礎であるはずです。高校卒業まで教室の中で大人社会から隔離され、囲いこまれた世界で受験勉強中心では、社会に出てから人間教育をやり直さねばならないのではないでしょうか。これでは、国際社会の発展に貢献できる若者は輩出されないでしょう。

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