学園

いのちの光

2018/03/01
いのちの光 『飛躍―新しい年度への決意』 

宗教センターニュース(2018年3月1日発行)

中学校宗教主任 大門耕平

主に望みを置く人は新たな力を得、鷲のように翼を張って上る。走っても弱ることなく、歩いても疲れない。(イザヤ書40章31節)

学習に対するモチベーションには、instrumental motivation、integrative motivationという二つがあることがGardner and Lambert (1959)によって示されております。これは、カナダにおけるフランス語学習についての研究で示されました。1920年代には、二つ目の言語(母国語以外の言語)を学ぶためには、知性が必要であると考えられておりましたが、Gardner and Lambertによって、モチベーションが高いこと、特にintegrative motivationを持っていることが知性よりも重要であることが示されました。

instrumental motivationは、道具的動機付けと訳することができ、テストで点を取るため、進級・進学するため、将来の職業に役に立つから、または専門の資料を読むためなど、目的が功利的な価値を反映している場合の学習についての動機づけを意味します。

これに対して、integrative motivationは、統合的動機づけと訳すことができ、例えば英語の本やニュース、映画を理解したいということや、英語で話されるグループに参加したい、英語圏の国に行きたい、英語文化に興味があるなど、目標言語集団に参加するために、その集団で話されている言語を獲得しようとする動機づけであると定義されました。

そして、この論文では、integrative motivation、すなわち、他国の人と交流する願い、他国の人と友人になるという気持ち、それが外国語習得には非常に重要であると述べられています。

この論文から遅れること6年、1965年、ヴォーリズ学園の創立者の1人、一柳満喜子先生は、国際人教育の目的について、「外国に侵入して貪(むさぼ)る人は世界の平和を破る。しかし、外国に行って友をつくり、その土地をうるおすことの出来る人、これは世界人類をつなぐ平和の使者なのである」という文を書かれております。偶然かもしれませんが、テストの点を取ることや将来に役に立てるためなどの自分の利益のための動機ではなく、「友をつくる」、「その土地をうるおす」という動機を育もうとする教育の姿があったことが記録されています。

ヴォーリズ学園の国際人教育がこの意味で先鋭的であること、理論的であること、ここに深い意義があるのだと私は思います。

満喜子先生は、国際人教育のモデルはヴォーリズ先生だと述べておられます。ヴォーリズ先生はこの日本で多くの友をつくり、1500以上の建物を残しました。「一緒にいたい」、「一緒に働きたい」と思ってもらえる存在、人と共に歩むことを大切にした生き方、それがヴォーリズ先生の国際人としての姿です。

あなたはどんな思いで学習をしていますか、学習に向き合っているでしょうか、学ぶ意味をどのように考えているでしょうか。ヴォーリズ学園につながる私たちは、友を作るため、周りの人々をうるおすために学ぶということを学ぶ動機に据える者でありたいと願います。

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